骨盤裂離骨折とは

骨盤裂離骨折は、成長期のスポーツ選手によく見られる外傷性の骨折です。骨盤には筋肉が付着する部分があり、成長期にはこの部分がまだ完全に骨化していないため、強い筋収縮が加わると、付着部の骨が筋肉に引っ張られて剥離してしまうことがあります。
短距離走のスタートダッシュ、サッカーのキック動作、ジャンプの踏み込みなど、急激で強い筋収縮を伴う動作で発生しやすく、10代前半の成長期に多く見られるスポーツ外傷です
原因
骨盤周辺にある強力な筋肉(太ももの前や裏、腹筋群など)が急激に収縮する際、その牽引力が骨盤の付着部に集中します。この力に成長期の脆い軟骨が耐えきれなくなることで骨折が起こります。
主な発生部位と関連する筋肉は以下の通りです。
- 上前腸骨棘:縫工筋・大腿筋膜張筋
- 下前腸骨棘:大腿直筋
- 坐骨結節:ハムストリングス
- 恥骨:内転筋群
- 腸骨稜:腹斜筋群
主な要因は以下の通りです。
- 全力ダッシュやスタートダッシュなどの急激な加速動作
- サッカーのキック動作
- ジャンプの踏み込みや切り返し動作
- ウォームアップ不足や柔軟性の低下
症状
骨盤裂離骨折でみられる主な症状は以下の通りです。
- 受傷時、「バキッ」「ポキッ」といった音(ポップ音)とともに骨盤周りに激痛が走る
- 痛みのために体重をかけることができず、自力での歩行が困難になる
- 剥がれた骨盤の部位(腰の横やお尻の付け根など)を押すと強い痛みがある
- 筋肉に力を入れたり、ストレッチのように伸ばしたりすると痛みが強まる
- 受傷から時間が経つと、患部が腫れたり皮下出血(青紫色の変色)が現れたりする
検査・診断
当院では、痛みの部位の特定と骨や軟骨の状態を詳しく評価します。
診察: 受傷時の状況確認、圧痛部位の特定、歩行状態や関節可動域の確認
X線検査: 骨盤のレントゲンを撮影し、骨が剥がれているか、ズレ(転位)がないかを確認
CT検査: 骨折片の大きさやズレ(転位)の程度を立体的に詳しく評価し、手術の必要性を精密に判断します

※赤丸部分 腸骨から剥離して転位した骨片がある
MRI・超音波検査: レントゲンでは見えにくい軟骨の損傷具合や、周囲の筋肉・腱の微細な損傷を精査し、治療方針を決定します
治療
保存療法(手術をしない治療)
安静・活動調整: 初期は松葉杖などを使用し、患部に体重をかけない(免荷)ようにコントロール
運動療法: 痛みの軽減に合わせて、無理のない範囲での関節可動域訓練や、周囲の筋肉の柔軟性改善(ストレッチ)を開始

薬物療法: 痛みや炎症を抑えるための鎮痛剤や湿布などの処方
物理療法: 超音波骨折治療器(LIPUS)など
手術療法
骨片の固定手術: 骨折片のズレ(転位)が非常に大きい場合や、早期のスポーツ復帰を強く希望するトップアスリートの場合などは、スクリュー(ボルト)等を用いて骨を元の位置に固定する手術が検討されることもあります。
超音波骨折治療法(LIPUS)
低出力の超音波を患部に断続的に照射することで、細胞を刺激し骨の癒合(くっつくこと)を促進する治療です。継続して照射することで、骨折の治癒期間の短縮が期待されます。

当院での対応について
当院では、骨盤裂離骨折の診察、検査、治療がすべて検討可能です。
患者様の症状や患部の回復状況、復帰したいスポーツの時期に応じて、安全かつ再発を防ぐための最適な治療・リハビリプランをご提案いたします。
以下のような方は、ぜひ一度ご相談ください。
- ダッシュやキックの瞬間に、股関節や骨盤周りに「バキッ」と音がして激痛が走った方
- 痛みが強くて足を地面に着いて歩けない方
- 成長期のお子様で、スポーツ中に股関節・骨盤周りの強い痛みを訴えている方
執筆者:院長 理学療法士 森 隆

