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変形性膝関節症のリハビリテーション

 変形性膝関節症とは加齢などの影響により膝関節に持続的に変形をもたらすストレスが加わることにより生じる膝関節の変性疾患です。

 

◎変形性膝関節症の病態・症状

 主な症状は膝に水がたまる、膝の痛み、関節の変形などです。初期の段階では関節の変形は軽度で、関節周囲の軟部組織の柔軟性の低下などにより、立ち上がり、歩き始めなどの動き始めの痛みが多く見られます。進行すると骨棘の出現や関節裂隙の狭小化などの関節変形、可動域(膝が曲げ伸ばしできる角度)の制限も著明になり、日常生活動作にも支障をきたすようになります。変形性膝関節症の進行度は一般的にレントゲン画像からKellgren-Lawrence分類(KL分類)を用いて評価されます。


◇ Kellgren-Lawrence分類(K-L分類)

段階 Grade 0 Grade I Grade II Grade III Grade IV
レントゲン画像
関節裂隙狭小化 正常 なし 軽度 中等度 高度
骨棘形成 なし なし あり あり あり

 

 

◎変形性膝関節症の原因

 原因としては加齢、筋力低下、肥満、膝関節の形状(O脚・X脚など)、過去の膝関節のケガの影響、不良な関節動作の習慣化などが挙げられます。

 

◎変形性膝関節症の治療・リハビリテーション

 変形性膝関節症の治療では疼痛の緩和と変形の進行の予防が重要です。当院では疼痛の緩和のために、外用薬や内服薬、関節注射などの薬物療法、電気治療などの物理療法を用いながら、理学療法士による運動器リハビリテーションを積極的に行っています。また進行期や末期の変形性膝関節症に対しては連携病院にて当院院長による手術も行っています。

 運動器リハビリテーションでは疼痛の原因となっている膝関節周囲の軟部組織の可動性や柔軟性の低下を改善させるために徒手療法を行ったり、膝関節運動や歩行などでの不良動作を評価し、それぞれの膝関節痛の原因に対して、筋力増強運動や動作修正練習などを行ったりします。今回は運動器リハビリテーションを中心にお話ししていきます。

 多くの変形性膝関節症患者の方は、「加齢」、「関節軟骨のすり減り」などの一般的によく言われる原因に加え、関節に負担のかかりやすい動作をしてしまっていることも影響していることが多いです。例として、家のドア(開き戸)をイメージしてみてください。取り付けの際に蝶番の金具が軸からほんの少しでもずれたまま取り付けると、開け閉めを繰り返すうちに次第に蝶番部が破損してくることは何となく想像がつくかと思います。膝関節でも似たようなことが生じていることがあり、例えばしゃがむような動作で膝が内側に入るような動作になる方は、膝関節が曲げ伸ばしの軸からずれた動きをしており、膝にねじりのストレスが過剰に働いたまま動かしていることになります。このような動作を数十年続けていればやはり膝関節には過剰な負担がかかってきます。膝関節の正常な運動を引き出すために、動作を評価したり、動作を修正するための筋力増強運動を行ったりします。


筋力増強運動

関節可動域運動

歩行分析

 

 変形性膝関節症の症状の強さとレントゲン所見の進行度は必ずしも一致するわけではありません。「症状」の改善のためには、レントゲン所見にとらわれすぎず、膝関節周囲の可動性、筋力、不良動作の改善などを続けていくことが重要です。

 膝の痛みでお悩みの方は一度ご相談ください。

 

執筆者: 理学療法士 小林 拓未