投球障害肩とは、野球の投球動作のようなスポーツでの投球動作の反復により、生じる肩関節痛の総称です。野球に限らず、バレーボールやハンドボールなど腕を上げたりすることを繰り返すスポーツの競技者にもみられます。投球動作により肩関節周囲の筋肉や靭帯、関節包などに繰り返しのストレスが加わることにより生じます。
◎投球障害肩の主な症状
・投球時の肩関節痛
・肩関節の可動域(動く範囲)の制限
・パフォーマンスの低下(コントロール不良、球速が出ない)など
・日常生活では痛みが出ないことが多い
◎投球障害肩の主な種類
投球障害肩は投球動作により生じる肩関節痛の総称であり、厳密には細かく疾患に分かれます。また、受傷しやすい疾患は各年代により特徴があります。
小学校高学年~中学生には、上腕骨近位骨端線離開が好発します。これは骨端線という骨が成長していく軟骨部分に投球時の回旋、牽引ストレスなどが繰り返し加わることにより、骨端線の骨膜反応や離開が生じます。
高校生以降では、肩関節周囲の筋肉である回旋筋腱板の損傷である腱板損傷、関節内で骨同士の衝突などによるインピンジメント症候群や関節唇損傷、上腕三頭筋の肩甲骨付着部の牽引ストレスにより生じるBennett骨棘などが好発します。
◎投球障害肩の原因
投球という動作は肩関節をはじめ、上肢に大きなストレスがかかる動作であり、その動作をくり返すことで肩関節に負担がかかり発症します。それに加え、身体の柔軟性や筋力の低下、フォームの不良、日常生活での不良姿勢などによって、投球動作時に肩関節により負担かかる状態であると投球障害肩は発症しやすくなります。フォームや筋力、柔軟性の低下などは痛みが出ている肩関節周囲だけの問題もあれば、肩以外の下肢や体幹などの柔軟性・筋力の低下や不良動作などが影響している全身性の場合もあるため、身体全体の要因を解決していくことが重要です。
◎当院の投球障害肩の治療
① 一定期間の投球動作の制限/禁止
疾患や怪我の程度にはよりますが、多くの投球障害肩で一定期間の投球禁止期間を設けることが多いです。単に投球を制限すれば一時的に症状が軽減しても、投球再開すると再発することが多く、前述の投球障害肩に至る身体の問題点や動作の不良などをこの期間に改善することが重要です。
② リハビリテーション
投球障害肩は投球動作という全身運動の中で肩関節に過度な負荷が加わることにより生じます。肩関節に過度な負荷が生じてしまう身体的要因を評価し、改善に向けてリハビリテーションを行っていきます。リハビリテーション内容は各患者さんの身体状況により異なりますが、一例を紹介します。
〈当院のリハビリテーションの一例〉
・一定期間の投球制限
・肩関節周囲、肩甲骨、胸郭、下肢、体幹などの可動性の改善
(例)肩関節後方のストレッチング
(例)体幹、胸郭の可動域改善
・肩関節周囲、肩甲骨周囲、体幹、下肢などの筋力の強化
(例)僧帽筋下部筋力増強
・不良フォームの修正など
・段階的な投球強度、球数Up・練習参加
投球障害肩、特に小児期に発症する上腕骨近位骨端離開などは、身体的に未成熟な子どもが過度な投球練習を行っていたり、休養を設けていないことなどが原因であることが多いです。投球障害肩により、将来の可能性を制限することがないように適切な治療、リハビリテーションを行うことが重要です。当院ではスポーツに精通した医師、理学療法士、柔道整復師が在籍しているため、競技復帰に向けて、適切にサポートします。また、当院2階のメディカルフィットネスジム(メディトレパーク)と連携し、さらなるパフォーマンスアップを目指すことも可能です。投球障害肩でお困りの方は一度ご相談ください。
執筆者: 理学療法士 小林 拓未