腰椎分離症は、スポーツ競技をしている小学生から高校生にしばしば見られる腰椎という骨の疲労骨折です。治療をせずに競技を続けていると骨の分離が進み、根治が難しくなることも多く、早期の適切な治療、リハビリテーションが重要となってきます。今回は、そんな腰椎分離症についてお話ししていきます。
目次
■腰椎分離症とは
■腰椎分離症の病期と骨癒合率
腰椎分離症は、骨の状態により「初期」「進行期」「終末期」の3つの病期に分類されます。病期ごとの骨の状態と、骨癒合率(骨がくっつく確率)は以下の通りです。
病期 | 初期 | 進行期 | 終末期 |
骨の状態 | ひび割れが起こる | 完全に分離する | 偽関節となっている |
骨癒合率 | 約90% | 約30%~約60% | 約0% |
表からもわかる通り、初期のうちに適切な治療を受けることができれば、約90%の確率で骨が癒合し、腰椎分離症は治ることが多いです。一方、骨が癒合せず偽関節となってしまった終末期だと、その後の骨癒合は困難です。偽関節になると将来的な腰痛のリスクも高くなるため、腰椎分離症は、早期発見と、骨癒合を目指すことが重要になります。
■腰椎分離症の治療法
当院では主に2パターンの治療法を行っています。一つは完治(骨癒合)が見込める場合、長期間コルセットの使用による安静・リハビリテーションを行うこと。もう一つは骨癒合が見込めない場合や、長期間の運動休止が困難な場合などに、早期に競技に復帰できるようリハビリテーションや装具で痛みのコントロールを行い競技復帰を目指す方法です。後者の場合、骨癒合が得られず将来的な腰部の痛みなどにつながることがあり、しっかりと考えたうえで治療法を選ぶことが重要です。
◎初期から進行期は骨癒合を目指しコルセットで固定する
初期から進行期は骨が癒合する可能性があるため、骨折の原因となる動きを制限して骨癒合を目指します。コルセットを装着し、数か月のスポーツ活動の休止が必要になります。骨癒合が得られてきたら、医師と相談しながら体の状態に合わせて少しずつ運動の強度を増やしていきます。
CTやMRIで骨癒合を確認できれば、本格的にスポーツ競技の再開が可能です。しかしながら、スポーツ競技再開後も再発予防のために、理学療法士らの指導のもとリハビリテーションを行うことが重要です。骨癒合を目指した場合、スポーツ競技が再開できるまでの期間の目安は、3カ月~6カ月前後とされています、しかし、回復スピードや病状には個人差があるため、1年ほどかかるケースもあります。
◎腰椎分離症のリハビリテーション
腰椎分離症は、身体の柔軟性の低下や筋力の低下、動き方の癖などにより、腰に負担のかかりやすい動きを繰り返すことが原因です。そのため、適切な身体の動きや機能を獲得し、悪化や再発を予防するためにリハビリテーションが欠かせません。リハビリテーションでは、患者さんの身体状況を評価し、それぞれに合わせたストレッチや体幹トレーニング、動作練習などを理学療法士の指導のもと行っていきます。腰椎分離症のリハビリテーションは長期戦ですが、痛みがなくなったからと勝手にやめたりせず、根気よく続けることが競技復帰やその後のパフォーマンスアップの近道となります。
☆ストレッチ
ストレッチでは、太ももの前側やお尻など股関節周りの筋肉の柔軟性の改善を目指します。股関節周りの柔軟性が向上することで骨盤の動きが増え、腰の負荷軽減につながります。
(写真1)
☆筋力トレーニング
筋力トレーニングでは、腹筋や背筋など体幹の筋力を中心に鍛えます。体幹の筋力が増強することで腰椎の安定性が増し、腰に負荷がかかりにくくなります。
(写真2)
☆動作練習
腰椎分離症になる方は、背骨の柔軟性が低下や筋旅行の低下により、腰椎分離症の原因となる腰を反る動作やひねる動作で過剰に腰に負担がかかる動作をおこなってしまう方が多いです。当院では理学療法士の指導のもと、不良な動作の改善を目指した介入も行っていきます。
(写真3):(不良例)胸が反らず、腰が反りすぎている
(写真4)(良好例)背骨全体がまんべんなく反っている
腰椎分離症でお悩みの方は
早めに専門医に相談を
腰椎分離症をできるだけ短期間で治し、早期にスポーツ競技に復帰するためのカギは、早期発見と適切な治療です。当院ではスポーツ専門医と理学療法士が在籍しているため、スポーツ種目に合わせた最適な治療を提供できます。腰椎分離症でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
にしはら整形外科スポーツクリニック
院長
西原 淳
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