肩関節唇損傷（かたかんせつしんそんしょう）とは、肩の関節の縁にある軟骨に近い組織「関節唇」に損傷や炎症が起こる状態のことです。肩をよく使うスポーツ選手や、肩の脱臼の経験がある方に多く見られます。肩の奥の痛みや、腕を動かしたときのひっかかり感、力が入りにくいといった症状が特徴です。

原因：関節唇は肩関節を安定させる重要な組織ですが、次のような場合に損傷しやすくなります。

• スポーツなどで腕を繰り返し大きく振る動作をする場合（野球・バレーボール・水泳など）
• 転倒して手をついたときや肩に強い力が加わった場合
• 過去に肩を脱臼した経験がある

症状：肩関節唇損傷の症状としては、以下のようなものがあります。

• 肩の「ひっかかり感」や「抜けそうな感じ」
• 肩の奥の痛み（特に腕を上げたり回したりしたとき）
• 力が入りにくくなる
• 夜間痛や安静時痛が出ることもある

違和感を放置すると、日常生活やスポーツに支障が出る場合があります。

 

検査：当院では、以下の検査を組み合わせて肩関節唇損傷の有無や程度を診断します。

• 診察：肩の可動域や動かしたときの痛み、関節の安定性を確認
• X線検査：骨折、変形などを確認
• MRI検査：肩関節唇損傷の状態を確認。他の疾患との鑑別が必要な場合に実施

   
赤矢印：上方関節唇損傷　

赤矢印：上方から後方の関節唇損傷
黄矢印：前方の肥厚した関節唇

治療方法：関節唇損傷の治療は、症状の程度や肩の不安定性によって異なります。

保存療法（手術を行わない場合）

• 安静、痛みのコントロール
• 肩関節周囲、肩甲骨、胸郭、下肢、体幹などの可動性や筋力の改善
• 日常動作やスポーツ動作の指導

手術療法：保存療法で十分な改善が得られない場合や、損傷が大きい場合には手術を検討することがあります。主な手術方法は以下の通りです。

• 関節鏡視下関節唇修復術

内視鏡（関節鏡）を使い、損傷した関節唇を修復する手術です。

手術後は装具などで肩を一定期間安静に保ちます。

その後、リハビリで肩の可動域や筋力を回復していきます。

日常生活は1か月ほど、ランニングや軽作業は2か月、重労働やスポーツ復帰までは、3～6か月ほどかかります。

• 烏口突起移行術（重度の場合）

関節唇や腱板の損傷が重度の場合、肩甲骨の一部（烏口突起）を関節の前に移行させます。

 

当院では、肩の関節唇損傷に対する診察・検査・治療をすべて院内で行うことが可能です。

症状の程度や生活スタイルに応じて、保存療法から手術まで最適な治療方法をご提案いたします。以下のような方は、ぜひ一度ご相談ください。

• 肩の脱臼を繰り返している方
• 肩の動きに不安定感を感じる方
• 投球やスポーツ中に「抜けるような感覚」がある方
• 保存療法で改善がみられない方
• 手術やリハビリの選択肢について相談したい方

執筆者：　院長　、　森　隆